アートのひみつ!

見慣れた海の先に広がる世界を見つめる三羽の鳥は、夜空の星座や遠い時間の向こうに生まれた神話や遺跡(いせき)ともつながっているよ。

見慣れた海の先に広がる世界を見つめる三羽の鳥は、夜空の星座や遠い時間の向こうに生まれた神話や遺跡(いせき)ともつながっているよ。

Q1. この海鳥と人間が合体したような3神は瀬戸内の穏やかな”海“、温暖な“気候”、緑豊かな土地を表しているそうですが、それぞれに名前をつけるとしたら?

久保さん:
ヤマドリ(青磁色)
ソラドリ(黄色)
ウミドリ(青色)

かな?覚えやすいように。

Q2. どうして冬の星座を選んだのか?季節には関係なく航海中に目印となったものだから?

久保さん:まず作品を置く場所を初めてみた時、水平に広がる丘のような空間に3体の彫刻が並んでいるイメージが湧きました。
元々ギリシャ神話やエジプト神話やヒンドゥー教など世界各地の神話に重要な”三神”の存在に興味があったので3体の像のイメージにつながったのかもしれません。

日本神話を調べると、イザナギが体を洗った際に生まれた底筒男命(そこつつのおのみこと)、中筒男命(なかつつのおのみこと)、表筒男命(うわつつのおのみこと)が住吉神社に祀られた三神であり、それらがオリオン座の三つ星と同一視されているということを知りました。
三つ星が冬の夜東から縦一列に昇り、西に縦一列に沈むこと、またそれらの位置と角度で時間の指針にもなることから航海の目印となってきたことを知り、造船業の街に置く作品にはふさわしいテーマだと思いオリオン座と名付けました。(ちなみに夏は”夏の大三角”を目印にするらしいです。)

エジプト、ギザの3大ピラミッドもオリオン三つ星の配列を模しているという説もありますね、余談ですが。面白い。

Q3. 丘から見渡せる、船のドック(船を作る場所)にひらめきを得ましたか?

久保さん:今回は風景や環境、場所からのひらめきが一番大きいと思います。呉や福山など、瀬戸内海沿岸の工場地帯の風景は子供の頃から見てきた親しみある風景で、近年関東に移住してからは全く違う環境に暮らしているので、まずは懐かしいという気持ちが強かったです。そして故郷の人間に長く愛される良いものを作りたいと思いました。
大型クレーンなどの重機を操り、巨大な構造物を作る現場で働く職人たちを見るたび敬意を覚えます。彫刻家個人のスケールがいかに小さいか感じられるので、そういう現場を見ることが好きです。

Q4. この辺りで育つ子供達に、何か伝えたいメッセージはありますか?オリオン座を道しるべとして航海した大航海時代の冒険者たちに重ねて?

久保さん:世界中に旅立つ船を身近に見て暮らす子供たちは、海の向こう側への想像力が豊かに育つと思います。
瀬戸内は山、海、島々それぞれに独特の風土があり、世界的に見てもとてもユニークな環境だと思います。自分自身も日本国内や海外のいろいろな土地を訪れて、さらにそう思うようになりました。子供たちにも故郷の素晴らしさを知るために、広い世界に羽ばたいて欲しいです!

Q5. 制作方法、素材について、どうしてタイルにしたのか、何が大変で何が素晴らしい表現メディアとなったか、など教えて頂けますか?

久保さん:これまで作品を作る上で、古代から続く技法やテーマを選んできました。
何が時代をこえて作られてきたかというのは、考古学や博物館で見る民俗資料や、古代文明の遺物から自分なりに考えてきました。例えば”仮面”、”壁画”、ライオンをモデルにした”獅子像”や"お守り"などの造形と機能を備えたもの、土器やテキスタイル、版画や木彫といった世界のいろいろな場所で見られる技法。その中でも”モザイクタイル”という技法は、イタリアのポンペイ遺跡で2000年前に作られたものを見た時からいつか自分でもやってみたい技法の一つでした。古典的な彫刻の一つの美学というか態度として、塗料ではなく素材そのものの色を活かすということがあると思います。
それは長年彫刻を学び作る上で、自然と自分の作品制作のルールにもなってきました。
カラフルな野外彫刻を作りたいけど塗装はしたくない、という自分の希望を叶える素材として色々と試行錯誤した結果、建物用の外壁タイルという素材に行きつきました。昨年訪れたメキシコで見た、アステカ文明時代に作られたトルコ石のモザイクタイルマスクや装飾品も大きなインスピレーションになりました。

実際にやると、大きな表面に小さなタイルを一つずつ貼っていくのは集中力と正確さを必要とする作業なので大変でした。特に曲面を埋めたり、細いラインを描くとき、決まった形のタイルを一枚一枚割って貼るのでとても時間がかかります。しかし、かけた時間と労力の分、目に見えて成果が出るので達成感もありますし、他の素材では表現できない造形の美しさがあると思いました。何十年も建物の外壁として劣化、色褪せしにくい素材として製造されたものなので、彫刻作品もこれから長年美しい発色と強さを保ってくれるだろうという安心感があります。

インタビュアー

椿 玲子

森美術館キュレーター